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草野誼の漫画「桜人」ネタバレ感想

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死を目前にした人が心の奥に隠していた「本当の願い」とは――草野誼先生の「桜人」は、人間の死生観を揺さぶる6篇の短編が入ったマンガ集です。

「桜人・第一話にわとり」のネタバレ

 

二〇八号室の大杉夏代は、腎臓ガンの末期で余命いくらもありません。けれども夏代は投薬治療もあきらめて、静かに最期の日々を過ごそうとしていました。バッグにお菓子をパンパンに入れているのは、周りの人たちに配るためです。

お見合いで結婚した夫には愛されず去られ、子供もいないので、今まで職場の仲間や近所の人など身近にいる人たちにできる限りの親切をして、いい思い出を残して逝きたい。それが自分の願いだと考えていたのです。

入院患者の中で、自分と同じようにガンで余命いくばくもない死に際の呆けた老婆・大杉ハルは夜明け前の同じ時刻に毎日大きなうめき声を上げて、みんなの安眠を妨げていました。

夏代と同じ名字なのはたまたまです。ハルは介護士たちからも『にわとりの大杉さん』と馬鹿にされており、ボケているから何もわからないだろうと面とむかってあざけられていたのです。

副葬品を作る職人・慶太郎

ハルの部屋に、まるで桜の木のような綺麗な男性が入っていく姿を夏代は見かけます。彼は花森木工所の梻(しきみ)慶太郎で、副葬品をつくる職人だと聞いて、夏代も自分も依頼したいと話しかけます。

副葬品は革や鉄はダメなので、個人の愛用品を木でつくってお棺に一緒にいれるものです。

「人に親切」がモットーだと話し、みんなにお菓子を配っていたこのバッグの副葬品を作ってほしいと頼むのです。すると慶太郎は夏代の依頼は受けられない、と断ります。ハルさんは作ってくれるのに、どうしてわたしだけダメなの!?と夏代は怒ります。

「それは本当にあなたの心からの願いですか?」と慶太郎は言い、「あなたは桜人ですのに」という謎の言葉を残して立ち去ります。

自分の棺の中に入れたいものは?

愛してくれる家族もいない夏代によって、周りにいる他人に親切にすることがすべてでした。そして自分の親切さをアピールするために、いつも持っているバッグにはお菓子をたくさん入れて配っていました。

棺の中に入れたいのは、この大事なバッグ。これを見てくれたら、みんなが私を思い出してくれるだろう。夏代はだから、バッグこそが副葬品にふさわしいと考えていたのです。

しかしトイレでいつもお菓子をあげている女性ふたりの話で、『にわとりの大杉さん』と馬鹿にされていたのが実は自分のことだった、と知り愕然とします。いつも人にペコペコして首を振って歩く姿がまるでにわとりみたいだというのです。

馬鹿にされていたのはハルさんだと思っていたのに、実は自分のことで、あげていたお菓子も「重病人からもらったら縁起が悪いから捨てた」と聞いて大ショック。親切のつもりでしていたことが、そんな風に思われていたなんて・・・。

そして夏代は初めて自分が気持ちを偽っていたこと、慶太郎が言った「心の声を聞く」ことの意味を知るのです。

収録作品案内

この作品には6つの短編マンガが収録されています。副葬品の職人・慶太郎が死にゆく人たちの「本当の願い」を聞き取り、棺に入れたいものを真心込めて差し出す内容になっています。

・にわとり
・へび母さん
・真夏の凧
・あこがれ
・まなびや
・まぼろしの家

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