漫画

おとむらいさん(漫画) ネタバレ感想 大谷紀子

更新日:


大谷紀子先生の漫画「おとむらいさん」は、売れない女優が葬儀の司会役を頼まれたことで「本物の人間ドラマ」を目にして、虚構のドラマの世界から葬儀の世界へと引き込まれるお話です。

「おとむらいさん」のネタバレ

売れない女優いづみ

女優歴10年、28歳になる音村いづみは知的なクールビューティな外見なものの、光り輝くオーラはなく、いつも回ってくるのは死体になる役ばかり。「幸薄女をやらせたら音村さんの右に出るものはいないね」と変な方向で監督にほめられるものの、売れない女優でした。

仕事が切れてしまえば、ただの人。明日からどうしようかとため息をついていたところ、入居しているマンションの1階の花屋の息子・杉浦と立ち話をして、彼に「音村さんってさ、いい声してるよね。声のお仕事ができるんじゃないの?」と言われます。

そのあと、いづみにショッキングな出来事が起こります。女優を目指すきっかけとなった大監督の根津高次郎が病院に入院し、監督業を引退するというニュースが流れたのです。いづみの長年の夢は、根津監督の作品に出演することでした。仕事も芳しくなく、あこがれの根津監督の作品に出ることも不可能になったいづみは、お通夜状態になります。

葬儀の司会の仕事を引き受ける

ショックのあまりに部屋で死体のように転がっていたいづみでしたが、杉浦がやってきて司会の仕事を引き受けてもらえないか、と頼んできます。説明の際に「何の司会」なのか説明されなかったため、いづみはてっきり、花屋さんのつながりで結婚式の司会だろうと考えていました。

着いた先でプランナーの産神清高はいづみが女優だと紹介されて、「映画やドラマにはどうにも興味がもてない。あーゆー偽物の人間ドラマって」と言い放ち、いづみはさすがにカチンときます。

「ここには本物の人間ドラマがたっくさん詰まってるから」

と言われて入った会場は「葬儀場」でした。今日のお式って、お葬式だったの!?と驚くいづみ。勘違いで引き受けてしまったものの、今更あとには引けず、葬儀の司会をつとめることになりますが・・・

感想・葬儀という本物の人間ドラマ

いづみが女優としてやってきたのは、根津監督という天才がつくりだすドラマの世界を演じることを夢見ていたからでした。

ですから最初はまったく葬儀の司会をすることなど、考えてもいませんでしたが、ひょんなことから引き受けた葬儀社の司会の仕事で、根津作品に通じるような「美」を感じ取り、そこにハマって葬儀の世界に飛び込んでいきます。

いづみ自身、派手な女優オーラはありませんが、しっとりとした大人の落ち着いた気品があり、かえってそれが葬儀の世界で役立ちます。むしろ天職と言ってもいいのかもしれません。

亡くなった故人や遺族への細やかな配慮やいつくしみのあふれる所作。映画は偽物のドラマでも、常にそこには本物のドラマがある。いづみが「感動のドラマ」を人々を弔う仕事を通して体験していき、人間として女優として成長していく良作です。

-漫画

Copyright© ナナイロノウミ , 2018 All Rights Reserved Powered by AFFINGER4.