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奈落の羊 1巻 ネタバレと感想 きづきあきら・サトウナンキ作

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インターネットの生配信、というネットの闇を描く漫画「奈落の羊/きづきあきら・サトウナンキ作」。

アクセスを稼ぐためならどんな手段もいとわない主人公と、飽食の現代に空腹でフラフラになりながら、生きるためにどんなことでもする少女。ふたりの出会いが新たな闇を生み出します。

奈落の羊1巻のネタバレ

大学生の修二は、いくらか人気になっている生主。もっとアクセスさえ集めれば、就職なんかしなくてもこれで食べていけるのだと本気で信じていました。周囲はもう就職活動を始めているのに、ネット生配信でリスナーを集めることに血眼になっている修二。

毎夜、パソコンを開いてリスナーたちに雑談や、今日見つけた新作スイーツなど、他愛もない話をしています。笑顔で明るく話す修二ですが、その目は笑っていません。彼が最も気にかけているのは、リスナーたちの数。

一体どうすればもっとリスナーが増えるのか? どんなネタにすればもっとウケるのか? 修二の頭にはそればかりが浮かんでいたのです。リスナーたちに「つまんねー」と中傷されても、「眺めてるだけのテメーはもっとつまんねえよ」と腹の中で言い返して・・・。

夜な夜な、ひとりでパソコンに向かってしゃべる修二の姿は、家族からすれば不気味で姉からは「ひとりごとうるさいんですけど」と文句を言われる始末。ネットで人気者気取りかよ、とあざ笑うのです。もっとリスナーさえ増えてくれれば、金になるのに、と修二は焦り始めます。

バイトがてら、夜は「本業」のインターネット配信で、リスナーたちを相手に「しゅーじでーす。夜の放送はじめまーす」と挨拶をするのが日課。雑談をまじえながら、彼が凝視しているのは一体何人集まってきてるのかを示す「来場数」でした。

「最近つまんないなしゅーじ」というリスナーの言葉には、ヘラヘラ笑って心の中で罵倒しながらも、内心焦りを感じていました。

家族からの痛い視線

修二にとって、生配信は全世界でしたが、家族にとっては「夜中にボソボソとひとりごとつぶやく奇妙な行動」にしか見えません。姉に「ネットで素人が人気者気取りかよ、ウケル!」と笑われてしまいます。

俺の配信が見たくて支援してくれるやつらがもっと増えれば、金になる。悔しいながらも、まだまともな収入になるほどリスナーがいない修二は、姉に強いことは言えません。修二はこのとき、リスナーが見たがるネタを心から欲しがっていました。

夜の街を徘徊する極貧少女・メイ

夜の街を、住む場所もなくひとりでさまよう女の子がいました。彼女の名前はメイ。ネットカフェでウリをしながら日銭を得る荒んだ生活を送っています。

その夜は運が悪く、客が値切ってきてたった2千円ちょっとしか手元にありません。ネットカフェで支払いを済ませると、もう小銭しか残っていないほどに彼女は貧乏でした。スマホから掲示板に書き込みを投稿し、新たな客を待ちながら、メイは寒さをしのぐためにバーガーショップに入ります。

修二がネタを探して夜の街にでかけた頃、メイがネットカフェで寝泊まりしていました。ヨレヨレの服を着ながら、空腹を抱えて街をさまようメイは、お金を稼ぐためにウリをしていました。

気弱な彼女はキモオタに弄ばれたあと、金額を値切られてしまい、まともな食事をするお金すらなかったのです。何も持たない彼女が唯一持っているものはスマホで、スマホは大事な商売道具でした。

スマホからネット掲示板で相手を探し、小金をもらってなんとか生きている極貧生活。小銭しか持たない彼女は暖をとるために入ったハンバーガー店で、絶望のあまり叫びだします。

そして修二が彼女を見つけ、「面白いネタになる」と黒い笑顔で笑い・・・修二はリスナーを満足させるために、外出して実況中継をします。電車に乗りながら、飛び込みでもあればパーッとアクセスでも稼げるのに、と考えながらも「こいつらが飽きないネタが必要だ」と、もっと継続的にアクセスが得られるネタがほしいと歩きまわります。

バーガーショップに入った修二は、挙動不審なメイと出会うのです。そして修二が彼女を見つけ、「面白いネタになる」と黒い笑顔で笑い・・・メイはもう残金が尽きて、生きていくためのお金をどうすればいいのかわからないくらい悩んでおり、人目もはばからずに声を上げて、ブツブツとつぶやきはじめます。

修二は彼女に「ネタ」の匂いを感じ取り、彼女がウリをやっていると知って近づきます。

奈落の羊の感想

ネットで人気者になれば、就職なんかしなくっても生きていける――そう本気で信じている大学生・修二はネットの「生配信」に夢中になって――漫画「奈落の羊」は、きづきあきら・サトウナンキコンビによる、現代社会の心の闇に切り込んだ作品です。

修二は暴力的な人間ではありませんが、ある意味ではそれよりも非常にたちの悪い男です。メイをリスナーたちの「おもちゃ」として選び、彼女が貧乏で金に困っていることにつけ込んで「ウケそうなこと」を画面の前でやらせます。

ネタになるなら何でもやる、とでもいうように要求は次第にエスカレートしていき、メイは人としての尊厳を踏みにじられていくのです。

その行き着く先には、救いがなく、現代ならではの社会の闇が感じられました。

修二はブルブル震えて奇声を発するメイを見つけ、夜の生配信のいいネタになると話しかけます。リスナーからの反応は劇的で、この女をリスナーのおもちゃにしてやればもっと注目されるに違いない、と確信するのです。

いやあ、ゲスの極みですね(笑)やさしい顔で親切ごかしにメイに声をかける修二の顔はまさに鬼畜です。

そして彼女を拾って養ってやるかわりに、リスナーたちの前で「ウケる」ことを何でもやらせようとします。まるで飼っているペットに芸をさせるかのように、視聴者たちの前で彼らが望むことをなんでも・・・

修二がこのまんま調子に乗ってうまくはずもなく、「おもちゃ」で遊んでいたつもりが自分がおもちゃにされていく展開が待っています。

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