漫画

麒麟館グラフィティー ネタバレ 吉村明美

更新日:


全13巻で完結している吉村明美の漫画「麒麟館グラフィティー」は、人間関係や結婚観などを揺さぶられてしまうようなドラマティックなお話でした。

北海道札幌市を舞台にしている、というも珍しい(大抵の漫画は東京・関東周辺が舞台だから)し、何十年もたった下宿にいるちょっと変わった人たちが出てくるとなると、想像がどんどん膨らんでいきます。

麒麟館グラフィティーの内容

札幌の古い下宿・麒麟館の管理人をしている妙が、降りしきる雪の夜道で菊子という人妻を拾います。彼女は夫から道具のようなひどい扱いを受けていて、耐え切れずに家出してきたというのです。

弱っていた菊子をとりあえず、妙は麒麟館につれていきますが、よくよく話を聞くと菊子の夫は妙がずっと憧れていた大学の先輩の宇佐美秀次でした。初恋の人の妻、というどうにも微妙な関係にも関わらず、少女が大人になってしまったかのような無垢な菊子を妙は恋敵だからといって憎めません。

菊子に対してまるで人形のように物扱いしている宇佐美に、妙は軽い幻滅を感じるものの、恋心とは複雑でやはり彼のことが好きだし、彼の妻である菊子に嫉妬心を感じてしまうのは止められません。

家出した菊子はそのまま、麒麟館に住み着くことになり、下宿にいる火野が菊子に思いを寄せるように・・・

早すぎた結婚で「恋」を知らない菊子

菊子は家の事情があり、宇佐美とは恋をしないまま高校を出てすぐに結婚してしまいました。世間のことも恋も何も知らないまま人妻になってしまったため、菊子は夫の言いなりになって、ひたすら良き妻となれるようにふるまいます。

宇佐美は傲岸なタイプの夫で、菊子が一生懸命に料理をつくってもそれが当たり前で一度もほめたことがありませんでした。だから菊子が妙に食事をつくってあげて、妙が料理を喜んでくれたとき、ひどく感動します。誰かが自分の料理をおいしいと言ってくれた、と。

結局、菊子は結婚というもの、そして恋愛というものを実感できずに妻になり、宇佐美からDVをされてもそれが普通の夫婦なのかと思っていたわけです。結婚したから幸せになれる、というよりも、ふたりで幸せになりたいから結婚する、という気持ちでなければこのようなおままごとのような関係になってしまうのだ、と感じました。

菊子と妙の友情と依存関係

家出した菊子を保護する妙は、一見とてもしっかりもので、妙がいつも菊子を守ってあげているかのようにみえます。

でもその実、本当に芯が強いのは菊子のほうで、時折、菊子は肝のすわったところを見せます。妙は実直で言いたいことをそのまま言ってしまうタイプですが、じつは心は硝子のようにもろいところがあって、誰がどう客観的に見ても嫌な男の宇佐美の言動に一喜一憂してしまったり、菊子に嫉妬してしまう自分が嫌だったりと繊細です。

そんな心が弱ったとき、妙が頼るのは菊子でした。妙は物理的に菊子を守っていますが、菊子に精神的に寄りかかって依存しているのは妙のほうなんだよなあ。

本当に自分を愛してくれる人、そして自分が心から愛せる人を選ぶ。それだけのことがこんなに難しいなんて・・・何回でも読み返したくなる青春漫画でした。

-漫画

Copyright© ナナイロノウミ , 2018 All Rights Reserved Powered by AFFINGER4.