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「愚者の皮」ネタバレと結末 草野誼作の漫画

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草野誼作の漫画「愚者の皮」2巻を読みました。

美男美女の夫婦が、妻の美貌が激変したことを境に、「愛」も崩れ去ってしまう・・・。

顔の皮一枚で態度を変えた夫に、妻はいつしか愛を憎しみに変えて、どこまでも夫を追い詰めていく。

「現実離れした展開」ではありますが、最終回まで読むと、この物語が神話のオマージュであったことがわかります。

ネタバレで、長い記事なのでご了承ください。

愚者の皮のあらすじ

 

あよと英馬は周りも羨むような、美男美女の新婚カップル。

英馬は花のようにかわいらしい妻を心から愛し、自慢にしています。

あよもまた、「兄(えな)や」と男性を尊敬する地元の言葉で英馬を慕い、英馬の子供をみごもってこれ以上はないほどの幸せを感じていました。

ある日、あよは老人ホームのボランティアの帰りにトラックにひかれてしまい、顔に大怪我を負ってしまうことに。

美しかった顔が醜くなり、お腹の赤ちゃんも流れて・・・

幸せだった日々が、一瞬にして変わってしまったのです。

英馬の自分を見る目に、あよは美容整形をして元通りの顔に戻そうと努力するも、整形が失敗して二目と見られない化物のような顔に。

 

「近寄るな、おぞましい!」

英馬はあよの顔を見て叫び、拒絶した挙句、あよを一人家に置いてさっさと逃げ出してしまいます。

あれだけ愛し合った夫が私を捨てるなんてありえない・・・あよは、夫の愛を信じ、二人の愛の思い出のドレスを着て、英馬が再就職したレストランに飛んでいきますが・・・

「私の兄(えな)やァ!」

と、呼んだあよの姿は首から下は華奢な美女、顔はモンスター、という非常にシュールなものでした。

そんなあよの姿を見た英馬は嘔吐し、「おまえの顔なんて見たくない!」と再度拒絶。

 

あよはやっと、「この人が見ていたのは、顔だけ」と、夫が本気で自分を嫌っていることに気づいたのでした。

顔が醜くなっただけで自分を捨てた英馬に、あよは憎しみを向け、復讐のためにどこまでも追いかけるのでした。

あよという人間の考察

 

最初は幸せいっぱいの妻として登場しましたが、あよは元々苦労人でした。

両親もなく、養親のもとでこき使われたりセクハラされて育ち、だぶだぶの汚れた作業着で工場で働いていたのです。

エリート社員として工場にやってきた英馬と出会い、あよは見初められます。

「粗末な服を着ていても隠せない可憐さ」を見ぬいた英馬から贈られたドレスを着て、あよは英馬の胸に飛び込み、はじめて幸せを手に入れたのでした。

 

妻となってからは、英馬のためにだけ生きます。家具も、綺麗な庭もすべては夫のため。夫だけを見つめて、生きていたのです。

あよは顔だけではなく心も美しい女性で、老人ホームでボケたおばあちゃんから汚物の入ったおむつをプレゼントされても、ニコニコしながら受け取るような優しさがあります。

愛する夫・英馬に復讐するために力となったのが、そのおばあちゃんの形見として受け取ったこ汚い枕に入っていた大金でした。

花のように可憐だったあよでしたが、底辺で生き抜いた人間の強さも持っており、驚くほどの行動力で英馬を追い詰めます。

探偵を雇い、ビルを購入して監視したり、英馬が再就職するたびに醜い姿で現れてぶちこわし、英馬の人生を狂わせていくのです。

憎みながらもあよの胸には夫への愛だけは決して消えることなく、英馬の苦しむ姿を見ても喜べません。

復讐をしたい、と言いながらもあよは自分でも何をしたいのかわからなくなり、執着を断ちきれず、ひたすら英馬の後を追いかけることしかできなかったのでした。

美しい顔に戻れるチャンスを捨てた理由

 

これらの不幸の原因は、すべてあよの顔の醜さでした。

あよは、英馬への復讐の中で体調が悪くなり、尼寺に身を寄せます。

そこには夫や彼氏の暴力により顔に傷を負った尼たちがおり、あよのことを気味悪がる人はいませんでした。

尼寺の住職の残月は「怒りは人間が持つ、三毒のひとつ。あなたには体と心の解毒が必要です」と、あよに夫への怒りを捨てること、そして体を蝕んでいる毒素を抜き取るように指導します。

寺に伝わる秘伝の毒出し法により、あよは元の美しい自分に戻れるほど回復していきました。

ところが、あよは自らその治療をストップします。

再び美しくなって英馬が戻ってきたとしても、それは「顔の皮一枚」が愛されているだけで、あよ本人を愛しているわけではない。

あよは、英馬が人間らしい思いやりをもって、醜い姿のままの自分を愛してくれる日まで、このままでいる、と決意したのです。

醜い姿のままで英馬と向き合い、本当の愛に目覚めさせるために・・・

 

英馬という人間の考察

 

愚者の皮の上巻だけを読むと、英馬という人間は顔が醜くなったという理由で妻を捨てた冷酷な夫でしかありません。

英馬は容姿端麗、仕事はどんな分野でもすぐにトップに立ってしまうほどの優秀さです。

そして汚い格好をしていたあよの美しさを見抜いたり、「心の濁った人間にこんな澄んだコンソメスープは作れない」など、ほかの人にはない洞察力もあります。

ただ、その能力の高さゆえに「完璧主義者」であり、完璧な美しい妻だったあよの一点のシミである「顔の醜さ」に耐えられなかったのです。

あよに追いかけ回されたせいで職を転々とし、ついには最低の労働環境で働くほどに身を落としていきます。

 

そんな中で英馬に「変化」が起こり始めます。

今まで完璧なもの、美しいものにだけしか目を向けなかった英馬が、病気でボロボロに醜くなっている子犬など、汚くて哀れなものに心を向けるようになってきたのです。

あよは英馬に「あなたは昔から、2つの顔をもっていた」と言い、か弱いものに手を差し伸べるやさしさと、美意識が許さないものに対する冷酷さを指摘します。天使の顔と、冷酷な顔という二面性を持つのが英馬という男性でした。

英馬はあよに、自分の心の奥底まで見ぬかれたことで初めて自分を恥じるようになり、醜いままのあよに尊敬と誇りを感じるようになります。

ここでやっとあよは、「英馬に、醜いままの自分を愛してもらう」という目的を達したのです。

最終回ネタバレ:あよと英馬の最後の試練

 

「今度は僕が君を追いかける番だ」と言った英馬の言葉を胸に、あよは尼寺に戻って元の美しい顔になるための毒抜きの行をはじめます。

そして、あよを迎えにいくために、英馬は仕事を成功させようと海外に行くつもりでした。

ですが港でたまたま出会った、体の不自由な男性の世話をするうちに、出世を捨てて、身寄りのない人々を集めたシェアハウスで働くようになります。

美貌を取り戻したあよが、英馬に会いに行き、二人は和解しますが・・・

あよを恨んでいる近所に住んでいた女が塩酸をかけようとして、あよをかばった英馬の顔にかかってしまいます。

女は日本神話のイザナギとイザナミの故事を持ちだして二人を呪います。結果として、あよは英馬の顔の塩酸をなめとって声を失い、英馬は視力を失いますが、二人の障害にはなりません。

もはや、二人の愛は顔の皮一枚にとらわれるようなものではなく、失ったものを嘆かずに今あるものだけを見つめて、永遠の愛を手に入れたのでした・・・。

醜くなった妻から逃げる夫、イザナギとイザナミの神話を下敷きにした物語だったんですね。

夫婦というものの在り方、そして本物の夫婦愛について見事に描かれている漫画でした。

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